金魚坂
創業350年の金魚屋「金魚坂」が本郷にある。入り口には鮮やかな「金魚坂」の看板。今では金魚を扱うのみならず、喫茶店、料理店、葉巻屋でもある。
金魚は、日本では鎌倉時代にはその存在が知られていたが、金魚そのものは室町時代に中国から伝来した。ただ当時はまだ飼育方法や養殖技術等が伝わっておらず、定着するには至らなかった。江戸時代に大々的に養殖が始まったが、江戸前期はまだまだ贅沢品であった。江戸前期の豪商淀屋辰五郎は、天井にとりつけたガラス製の大きな水槽の中に金魚を泳がせ、下から眺めることにより暑気払いをしたと伝えられている。金魚売りや金魚すくいをはじめ、江戸中期にはメダカとともに庶民の愛玩物として広まった。庶民は金魚玉と呼ばれるガラス製の球体の入れ物に金魚を入れ軒下に吊るして愉しんだり、たらいや陶器・火鉢などに水を張って飼育したようである。
化政文化期には、浮世絵や日本画の題材としても広く取り上げられている。幕末には金魚飼育ブームが起こり、開国後日本にやってきた外国人の手記には、庶民の長屋の軒先に置かれた水槽で金魚が飼育されているといった話や金魚の絵などが多く見られる(エメェ・アンベール『絵で見る幕末日本』(講談社学術文庫)ほか)。

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