同窓生紹介

タイシルクと五中の知られざる逸話
タイシルク王ジム・トンプソンと五中コールフィールド先生

タイ土産のタイシルクを前に。
すてき。色もつやも風格がありますね。
そうでしょう。これがタイシルク。タイ土産じゃ結構有名ですが、これはちょっと違うんです。ここを見てください。
えーと、「ジム・トンプソン」てあります。人の名前ですね。
人名ですが、お店の名前ですし、ブランド名でもあります。
トンプソンは1906年生まれのアメリカ人で、元々はタイとは全く関係がありません。太平洋戦争の末期、CIAの前身のOSSの一員として日本の後方攪乱のためタイの派遣されるという任務が接点でした。ただし、派遣当日に日本が降伏を受け入れたため、タイに入ったのは戦後。
やがて、タイの人々が自消用に織る絹の織物のすばらしさを発見し、その良さを引き出すデザインを考案し、その織物をアメリカに持ち込み、高い評価を得て、タイの一大産業へと発展させた人です。

紙袋から数冊の本を取り出す。
実は、トンプソンを有名にしたのは、それだけではなかったのです。
この本のタイトルは『失踪』とありますね。
はい、ベトナム戦争の激しかった1967年にマレーシアで行方不明になりました。この本はウィリアム・ウオレンの書いたドキュメントですが、こちらは松本清張の『熱い絹』。ミステリーです。この本にも書かれていますが、日本では全くといってよいほど話題にならなかったようです。
1967年なら新聞は隅まで読んでいましたね。記憶にありません。
ジム・トンプソンって、知れば知るほど面白いんです。シルクにしても効率はよいだろう工場制は取らないんです。織る人本位の家内工業。織機はお金を貸して買わせる。だから、トンプソンが育てた職人が、トンプソンのまねをする同業者に引き抜かれることもしょっちゅう。
ここに「億万長者」とありますが・・・。  第三書房刊          講談社文庫版
はい、トンプソンは億万長者です。でも、シルクでは自分の取り分を最小限度にしておりました。億万長者の所以は莫大な遺産相続のためなのです。

紙袋からパンフレットを取り出す。
トンプソンの家は、トンプソンが存命中から公開されていました。私も行ってきました。室内は写真禁止ですのでこのパンフレットを見てください。
立派な美術品ですね。
軍に志願する前は建築家で、美術品に対しての審美眼も高く、その億万長者と呼ばれる財産でタイの伝統的な建築物や民芸品、仏像などを収集したのです。それこそ国の博物館収蔵品以上の逸品もその中にあると言われていました。
左下の写真を見てください。中央の人物がジム・トンプソンです。後ろは、元は窓だった場所に美術品を飾っています。手前には美しい絹織物が広げられています。

自宅で 織り職人と仕上がりをチェック中 居室

ジム・トンプソンと我々の関係は?
いよいよ我々との関係が明らかになるんですね?
トンプソンはタイの伝統的な家を手に入れ、そこに美術品を飾りました。社交好きのトンプソンは多くの客をこの家に招待しました。そんなことで、彼の家は観光スポットになってしまいました。トンプソンは自分のライフスタイルを守るため、屋敷の公開日を決めました。さらにその際お金を取り、有効に使うことにしました。
億万長者が、参観料ですか?
ある団体に寄贈したのです。ここを見てください。 上:移築中  下:現在
「そこで彼は、1週のうち2日間だけ、家を公開することに決め、見学者からは入場料を取って、それを慈善事業として経営されているバンコックの盲学校に寄付することにした。この学校は、ジュヌヴィエーヴ・コルフィールドという盲目のアメリカ婦人が創設したもので、トムソンは彼女を大いに尊敬していたのである。」
ウイリアム・ウオレン『失踪』より
コルフィールド? あっコールフィールド・・・。だったら伊藤長七のページに紹介されていますよね。伊藤長七校長が採用した3人の女性教師の一人。
そうです。五中で1923年から1937年まで英会話を教えていた先生と思われます。タイの盲学校の創立は1939年とありますので、時期的にも合います。「盲目のアメリカ婦人」は著者の誤りと思います。実はこのあたり、行けば確かめられるかと思い、ジム・トンプソン邸博物館で尋ねたのですが、残念ながらはっきりさせることはできませんでした。ただし、盲学校への寄贈(見学料の一部)は現在も続いているそうです。
コールフィールド先生ってすごい人ですね。
本物の教育者ですね。だからトンプソンの尊敬を得ることができたのだと思います。もし、コールフィールド先生が五中時代、伊藤長七校長から感化されて・・・というのなら、また違った話の展開になるかもしれませんが、手がかりはありません。
タイは遊びに行ったものとばかり思っていましたが・・。
いえ、取材旅行です。(きっぱり) ですから、旅行代は同窓会で・・・。
だめです。(さらにきっぱり) 高級感漂うジム・トンプソンの店
タイに行かれる方は、是非ジム・トンプソン邸を見学コースに入れてください。
なお、コールフィールド先生が1939年に開設した盲学校は、「バンコク盲学校」で、現在「タイ視覚障害者財団」が運営しているようです。また、これとは別に「コールフィールド視覚障害者財団」という組織があるそうですが、こちらはコールフィールド先生の教え子が1988年に設立したものです。(コールフィールド先生は1972年に85歳でなくなられております)

ジム・トンプソン邸裏(かつては正面だった)の運河を疾走する水上バス タイシルク織りの実演 邸内のガイドさん。壁に掛かるのはシルクのプリントに使う版木
 
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